2015年12月17日

君は僕の友だち

今年の紅白のトリが近藤真彦と松田聖子に決まったのだとか...


聖子はともかく、だいぶご無沙汰なマッチは意外だった。それしたってジャニーズ勢多くないか。総勢‥7組?国内を代表するアーティストが集う紅白というよりも「アイドル歌合戦」そんな塩梅。高齢者の視聴者も多いのに、まってくもってして、時代に乗っ取った人選がなされていないNHK。


昨年は中森明菜絡みのことを書いたから、2015年は松田聖子に“若干”関連したものについて触れようと思う。日本を代表する歌手のひとりだが、一頃はドラマなどにもよく出演していた。女優の顔を持つ、彼女の出演作品で、とりわけ筆者の印象に残っているのが 「たったひとつのたからもの」である。

ダウン症というハンデを背負って生まれてきた、佐藤秋雪(あきゆき)君。わずか6年で終えてしまう、短い生涯を辿った“実話”で、同名タイトルの原作を2004年にドラマ化させたもの。この作品に秋雪君の母親役として登場していたのが、聖子。

彼女の熱演‥‥あまりにもドラマにマッチした小田和正の名曲「言葉にできない」‥‥それと、現実にダウン症の子を役者として起用するといった数種の要素に胸打たれ、このドラマがきっかけとなって、のちに原作の方にも目を通した。




「縁は異なもの‥」とはよくいったものである。何年か経ったあとに、僕は障害を持った子たちがいる職場に配属されることになった。その中のひとりに“ウッちゃん”という、やはりダウン症の子がいた。‥子なんていったら失礼か。歳は自分とほぼ同じくらいで、ちなみに「ウチダ」だから、ウッちゃん。周囲からそう呼ばれていた。

愛きょうがあって、みんなに人気もあったけれど、いかんせん障害者と接するのが、僕自身は初めてで、最初は距離を置いていた。たまたまそのウッちゃんを含めた数人と、従業員食堂で昼食をとる機会があり、そのとき彼が「野球好き」であることを知った。大、大、大のジャイアンツファン‥。ウッちゃんは熱烈な「G党」だった。


『タカハシがね、それからウエハラがこうで』‥こちらはあいにくG党ではなかったのだけれども、ジャイアンツの話をすると、彼があまりにも嬉しそうな顔をするので、そのときは僕も一時的にGファンとなって、ウッちゃんと向かい合った。彼を喜ばせるために、巨人について勉強もした。過去のこと、現在のこと。監督の采配ぶりやスタッフ(コーチ)について‥。おかげで、ずいぶんと詳しくなった。以来、すっかり打ち解けたウッちゃんと僕...


いつものようにみんなで食卓を囲んでいた、ある日。ウッちゃんが実際に観戦しに行きたいと云いだした。しかし、僕は曖昧な返事をすることしかできない。彼とはあくまで職場での付き合い、プライベートなところまでは、関わりきれない‥‥そんなふうに、自分の中では割り切っていた、つもりだった。

ウッちゃんはちがう。少なくとも僕のことを「友達」だとは思ってくれていたのだから。‥差別をするわけではないが、やはり、あの頃の僕は、まだ線を引いてしまっていたんだと思う。

一度云いだしたら、もう聞かなくなるのが、ある意味オトコらしいウッちゃんだ。そのことが次第に周りにも漏れ伝わっていき、一応そこそこ野球観戦の仕方にも詳しい僕が“引率者”として、彼を東京ドームに連れていってくれないか?という話になった。


不安だった。‥正直。“周りの目”とかよりも、他の人に迷惑をかけてしまわないかといった部分で。またそうなった場合、はたして人としてまだ未熟な僕に「対処」することができるのか...


迎えた当日。初めて訪れたビッグエッグに、目をキラキラとさせるウッちゃん‥。『僕は昔、ここで仕事していたんだよ』は、この日まで温めておいた、とっておきバナシ。だが、そんな僕に対して一切の興味も示さないウッちゃんの関心事は、もうジャイアンツのことだけ。

売り子をつかまえて、さっそくビールを注文。ビール、本当に好きなのか?‥饒舌に話す彼は、意外にも僕より“オンナ”の扱いに慣れていたらしい。試合が始まれば、選手の応援に当然大声もだす。だが、それは野球観戦において日常的にある風景だ。しかも、気の利いた野次?を繰り出せるウッちゃんは、周囲に笑みをもたらす。

僕なんかよりも、よほど場に溶け込んでいる‥‥。こちとら東京ドームはガラガラの日ハム戦がほとんどであったから、慣れない大観衆を前にすると委縮してしまうのだ。調子に乗りそうだから、このことは彼には黙っておいたが。

人生初の“生観戦”を、おそらく満喫してくれたであろう、ウッちゃんの充実感に満ちた、あの顔。今でも忘れられない。ジャイアンツが試合に負けてしまったのは、少し残念ではあったけれど。


すべての不安は杞憂だった。むしろ、こちらの方が愉しませてもらったくらい。本当に何もかもがフツーで、あの日を境に、さらに“距離”が縮まった気もする。

退職によって、現在は疎遠になってしまったけれど、ウッちゃん‥僕らを結び付けた野球、ドームにはあれから行ったのかい。そうだ、ひとつ云い忘れたことがあった。

『君は僕の友だち』

これを面と向かって伝えられなかったのが、唯一の心名残。楽しい思い出を、ありがとう。またいつか、どこかで会える、その日まで---


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posted by 羽夢 at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 羽夢日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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