2014年12月16日

【敗れざる者たち】 -ノンフィクションを直視せよ-

奇才‥奇怪‥奇妙‥奇行...


なぜか“奇”がつく字に反応をしてしまう。たとえば以前あった「広末涼子の奇行」という文字を見かけた日には、一体どんな行為をしたのか、知りたくて知りたくて仕方がない。なにしろ“奇行”である。おそらく常人には理解しがたく、尋常ではない何らかの行為のことを指しているのだろうから。

男が見知らぬ女性宅にいきなりおしかけ、切りつけた‥‥先日そんな奇怪なニュースを目にした。逮捕された際に“奇声”を発していたとかで、ネット界隈でも取りあげられていたが、どうやらその男はクスリをやっていたらしい。奇声に、報道陣が構えるカメラに向かって男が「ピース」をしていた、奇行。クスリが身を滅ぼすことを怖さを実感したとともに、その昔、同様にテレビカメラに「Vサイン」を放った死刑囚がいたのを思い出した。


沢木耕太郎著、【敗れざる者たち】の一節のなかにも、「奇行」という文字が散見できる。毎日オリオンズの榎本喜八について触れている章だ。

この選手、私はほとんど存じていなかった。日本プロ野球の歴史云々の書物は数多く目を通してきたが、にもかかわらず、彼を語っているものなど、皆無に等しかった。なるほど通算2000本安打以上をマークしながら名球界にも入っていない。もはや榎本という存在自体が「封印」をされていてしまったのだろう。その理由の一端を、本書で窺い知ることができた。




内容はなかなかショッキングだ。冒頭にはこういった文章もみられる。

往年の名バッターが採用されるあてもなく、老化しようという躯に鞭打って猛特訓を続けている。この噂は無残なものである。その上、彼はすでに精神的に「錯乱」しているのではないか、という人もいた。 ※「さらば宝石」より


精神的に錯乱‥‥こう表されてしまう選手がプロ野球界にいたことに、まず驚いた。私は例によって榎本喜八が気になって仕方がなくなり、のちに出版された関連書物にも目を通してみたが、上記、引退後の「猛特訓」というのは、現役に復帰するためでなく“コーチ”として復帰を果たすためのものだったそう。それなら合点がいくとはいうものの、本書ではたしかに「奇行」の数々も語られていた...


奇行が原因か、そうでないのかよくは判らないが、当時の映像等がほとんど残されていないのが、残念でならない。2314安打に生涯打率が.298。プロ野球選手としては紛れもなく「一流」であったはずなのだから。フルスイングが持ち味だったという、数少ない資料を眺めてみれば、現代ならソフトバンクの柳田悠岐を彷彿とさせる。しかし、榎本は柳田などよりももっと優れた打撃技術を持ち合わせていた「奇才」であったにちがいない。ぜひ現役時代を拝んでみたかった。




【敗れざる者たち】では榎本以外にも数名のアスリートが取りあげられているが、他ではマラソン選手の円谷幸吉の章が強く印象に残った。かの有名な「遺書」に、東京五輪で銅メダルを獲得したまでの栄光と、後半以降の自死へと向かっていく“絶望”へのコントラストが、数奇なマラソン人生の物悲しさを皮肉に引き立たせてしまっている。

ブログランキング・にほんブログ村へ



posted by 羽夢 at 11:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 野球雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。