2014年11月27日

ゆくる人 -2014- vol.3

まさか、まさかのFA移籍である。


26日、小谷野栄一(34)のオリックス入団が決まった。出場機会を求めて‥なら、森本稀哲のときとよく似ている。糸井嘉男が完全に一人立ちし、陽岱鋼も正式に外野へコンバートされた時期。彼らはドライチで球団が金をかけて獲った選手、スター性だってある。レギュラーを争う相手としてはかなり厄介だ。それなら自分を心から必要としてくれるチームでやってみたい。‥その後の糸井の活躍ぶりや陽の成長をみれば、森本の決断もあながち間違ってはいなかっただろう。

しかし、“小谷野のケース”はどうなんだ。たしかに今シーズンは本職であった三塁に、近藤健介を多く起用していた。若手選手を積極的に起用する栗山監督なら、来季も同様な使われ方をされる可能性が極めて高い。それなら自分から出ていってやる---となるのは森本と一緒なのだが、ひとつだけ大きく異なる点。それは小谷野栄一以上、もしくは匹敵するくらいの力を持った選手が今のチームにはいないということだ。

‥ハッキリいって現状の近藤であるなら攻守両面において、まだ小谷野の足元にも及ばないだろう。今シーズンだって故障さえなければ小谷野が“定位置”に居座り続けていたと思う。栗山采配と故障という要素が合わさって三塁手・近藤が誕生した。とどのつまり、近藤は小谷野からレギュラーを奪い取ったわけでも何でもないのだ。そこを履き違えていると、来季は「小谷野不在」を痛感してしまうときが、かならずやってくる。だから、今この時期での彼の流出は日ハムにとってとてつもなく痛い、と感じる。


☆☆☆


打点王を獲得した2010年だったろうか。ヤフードームで杉内俊哉から放った右翼席へのホームラン。糸を引いたような美しい弾道を鮮明に記憶している。右打者でありながら、もともと逆方向にも強い打球を飛ばせる選手だったが、打順や場面に応じて“自らを殺して”進塁打に徹しようとする姿を何度もみた。にも関わらず「ここぞ」というところで仕留めてくれる選手でもあった。小谷野を表す形容詞として相応しい「勝負強さ」はチームの中でも群を抜いていた。

タイトルホルダーとすれば決して突出した数字ではない打率.311、本塁打16という数字。それでも109の打点をたたき出した。2010年以前からも打点数は異様に多かったが、このあたりにもいかに小谷野がチャンスに強かったかを物語っている。カテゴリ「勝負強さ」なら同じ打点王を獲得した経験がある小笠原道大よりも、上を行くのではないか。ありふれた云い方をすれば、ときおり「神懸かり」さえ感じた。筆者も長いこと見てきているが、日ハム史上に残る「クラッチヒッター」といっても過言ではないだろう。

その“予兆”ともいうべき試合を、私は現地で観戦している。完封ペースできていたC・ミラバルが9回に突如崩れ、4点のリードを守りきれずに同点とされてしまった。直後の裏の攻撃でサヨナラヒットを放った試合。彼にとってこれが記念すべきプロ入り初打点。強烈なインパクトを残してくれた、プロ2年目だった頃の小谷野栄一。ライト線スレスレのところへ落とす、やはり、鮮やかな流し打ちであった...


もう数少なくなった東京戦士の生き残り。同期の鶴岡慎也も昨年FA移籍した。鶴岡は「渦中の人」となってファン感には参加しなかったと訊く。別にそれ自体に問題はないけれど、ただ小谷野は今年、チームを移ることはすでに自分の中で決めていたと思うが、参加した。最後の最後まで「ファイターズの栄ちゃん」でいてくれた。だから私も来シーズン、実際にオリックスのユニフォームを着た小谷野を目にするまで『サヨナラ』は云わない。たくさんの感動をくれた「ファイターズの栄ちゃん」の余韻に、ギリギリまで浸っていよう。


ブログランキング・にほんブログ村へ



ラベル:小谷野栄一
posted by 羽夢 at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | FSコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。