2014年10月28日

ゆくる人 -2014-

二軍の試合を観に行った日のこと...


そこのブルペンはむき出しになっていてボールの威力、変化球のキレといったものはもちろん、選手の表情や息づかいまで“こちら側”によく伝わってくる。私も好きなその場所で、投球練習をしていたあるハムの若手投手の観察をしていると、幾度か目が合った。

当日知り合いでも来ていたのか、なにやらキョロキョロとしている。もしかしたら私のような中年に間近で凝視されて鬱陶しく思っていたのか‥真相は定かではない。ただいえるのは、「集中」できていないのだけは明白であった。

対象的に直後に姿を現した河野秀数は、約18メートル先の捕手以外には目もくれず、黙々と剛球を投げ込んでいた。練習に取り組む姿勢、心構え---。在籍期間が意外にも短かったのは、あるいはそういった部分も加味されていたのかも知れない。その選手は今オフ、球団から自由契約を公示された。


昨年あたりからファームでは不思議と、一軍でも活躍経験のある多田野数人が登板する日によく出くわした。タダノ絡みの話をすると必ずといってほどネタにされる、いわば「代名詞」的なあの超スローボール。

筆者が観たかぎりでは、二軍での試合では一度も投じられなかった。おそらく多田野の中ではハッキリとしていたのだろう。『あの超遅球は観客に魅せるもの』。打者を打ち取るためではなく、あくまでお客さんを喜ばせるための手段、“持ち球”のひとつであった‥。そう考えてみると彼こそがもっとも「プロらしい」投手であったと、いえなくもない。

緩んだ腕からボールが離され「フワっ」と浮き上がった、ほんの数秒。スタンドから沸き起こる、あの観客のどよめきが、なんとも云えなかった。『チームは負けた。でも多田野のスローボールを拝めてよかった』 そんなふうに満足して帰路についた人も結構いたのではないか。ストライクゾーン近辺に遅球をコントロールできる技術は、もはや「芸術」の域に達している。


かつてのようなミラクルが起きないかぎり、少なくともハムでプレーする彼はもう見れない。しかし、芸術的なボールを拝めればどのユニフォームを着ていようと、どこのリーグであろうと構わない。とにかくそこに、多田野が居ればいい---。今、多田野の現役生活を阻んでしまうことは球界全体の損失だ。


おそらく本人が思っている以上に、ハムファンは貴方のことが大好きだった。
いつの日か、かならず「再会」しよう。

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ラベル:多田野数人
posted by 羽夢 at 09:45| Comment(0) | TrackBack(0) | FSコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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