2回に7得点も取る猛攻をみせながらの逆転負け‥。7点差をひっくり返されるのはさして珍しいことでもないのだけれど、直後に同点に追い付かれたのは稀だ。いくら相手のホーム最終戦とはいえ、「そこまで花をもたせることはないだろう」などと、いささか憂うつのときを過ごした。しかし、この試合展開以外に、私が感傷的になった理由がもうひとつある。
石川亮、岸里亮佑、渡邉諒。当日は3人の高卒ルーキーがプロ初安打を放った。あらたな歴史のはじまり‥。金子誠のプロ初安打も同球場で記録したのを思い出して感慨にふけり、同じようにまた、彼らのプロでの「第一歩」を見届けられて、それ自体は非情に嬉しかった。引退スピーチで金子や稲葉が口にしていたように、3選手もこれから新しい歴史を球団史に刻んでいくのであろう。
一方で“門出”とまるで対極に位置する引退、「20年後」の未来を思った。ほぼ同年代だったから、並行して金子の“軌跡”は存分に拝めた。おそらく3名のルーキーの中にも一人くらいは、20年近く現役でいられる選手がいるはずだ。
その選手の現役生活を終えるまでを、私は今度も見届けることができるのだろうか---
20年後の自分はいったい何をしているのか。そんな先の未来は想像さえできない。もしかしたらもうこの世にはいない可能性だってある。そうしたら自分の知らないところで彼らが輝かしい歴史を刻んでいる瞬間(とき)を目にできない。それがたまらなく悔しい。
選手に対してではなく、むしろ今後を担う若きハムファンへの「嫉妬」である。こうして“歴史”は繰り返されていくものだと、自分とて分かってはいながら、しかし渡邉諒などは特に、田中幸雄や金子誠的な「ミスター・ハム」の匂いを感じさせるだけに、彼のプレーもできたら最後までを見届けたい...
ミシェル・ノストラダムスに人類滅亡の予言があった。地球の将来を知りたい、予言した未来を覗きたくて仕方ないのに、自分の肉体はやがて朽ち果ててしまう。“現代”に生きる人への「嫉妬心」から、あのようなこと書いたという話を本で読んだことがある。‥要は哀れな予言者と私は、一緒なのだ。