2011年09月13日

斎藤佑樹な物語‥

あの夏は田中将大だった。

とりたてて北海道の学校を応援していたというわけではなかったが、北海道代表として出場をし、北海道の高校に通う注目投手が、甲子園優勝投手となり、北海道に本拠地を置く球団に入団する‥。当時、私はそんな筋書きを描いていた。『田中がくれば北海道がもっと盛り上がる!』物語を完成させるために、まずは駒大苫小牧の全国優勝を願っていた。

田中の前に立ちはだかったのが、あの夏に一気に頭角を現してきた早稲田実業の斎藤佑樹。ハンカチなんかで顔の汗を拭い、どこか気取っているように見えて、またそれが様になってしまう斎藤が、男の嫉妬心からきていたのか、それとも筆者が現代人の感性を持ち合わせていなかったのか‥ どこか従来の球児らしくないさわやかさを、受け入れられずにいた。

高校生ドラフトのときもそう。斎藤が大学を進学の道を選んだ“おかげ”で田中への指名が集中し、ファイターズは「北のヒーロー」を獲得することが叶わなかった。結局てめえがクジを外したのがいけないわけで、とばっちりもいいところなんだけど、やりきれない想いを斎藤にぶつけてみたりもした。同時に筆者の田中への「恋」も終わった‥


2011年9月10日。あの夏のように蒸し暑い東北、仙台。

“物語”のなかでは田中に背番号『18』を付けてもらう予定でいた。それを今、斎藤が身にまとっている。ある意味「北の戦士」の代表として。なんかとても不思議な感覚だった。


思えばファイターズがまさか斎藤を指名することになるなんて、まったく想定外の展開だった。自分の中で“ヒール”だった斎藤が、逆に今度は物語の主役にならなくてはいけない。あの「ハンカチ王子」が札幌ドームで投げる姿なんて、全然インプットされていなかったのだ。

‥そこは元来気持ちの切り替えが早い筆者。すぐに前向きに捉えてみることにした。考えてみればあの年、日本国民のヒーローだった斎藤佑樹が北海道にやってくるのだ。それはそれで物凄く面白い物語になりゆるではないか!私はドラフト最中から、やがて来るファイターズの明るい未来をヒシヒシと感じ始めていた。


周囲が煽るほど“対決”を待望していたわけではなかった。「存在」がライバルなのであって、現時点での両者の実力は比較できるレベルではない。開いてしまった「現実」を目の当たりにするのが怖かった。5年の歳月を経て、筆者のかつての“恋人”田中は、もうどこか遠いところにまで行ってしまったのだから。

結果は当然といえばそうなのかもしれない。田中の圧勝だった。それくらい完璧な投球だった。それでも最後の打者をこの日初めて奪った三振で締め、自身初完投で投げ切った斎藤が見せた笑顔に救われたファンの方も、おそらく大勢いたのではないか。現状持てる力をすべて出しきり、投げ合うことができた充実感、そして安堵‥

とりあえず最後まで田中と同じマウンドに立っていられたのは自信になっただろう。この自信はプロ野球選手・斎藤佑樹にとっても、未来のファイターズにとっても‥ 敗戦のなかで得た大きな収穫だった。


posted by 羽夢 at 00:54| Comment(0) | TrackBack(0) | FSコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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