4月。開幕カードは敵地・藤井寺球場での近鉄戦。上田新監督が先発の柱と目論む西崎幸広・グロスを立てながらもいいところなく連敗を喫する。対象的に思惑通りの連勝スタートを切った鈴木啓示監督のファイターズには勝って当たり前かのようなコメントに、反論できる材料も、元気も湧いてこない。
3戦目は本拠地に帰ってのブルーウェーブ戦。久しぶりに戻った東京でこの日は打線が奮起し、接戦にまで持ち込んだ。しかし、頼みのリリーフ陣が踏ん張りきれず、9回に決勝点を奪われて敗戦。投打がかみ合ってこない。これで球団史上38年ぶりとなる開幕3連敗。これでもかと云わんばかりの負の連鎖は一向に収まる気配はなく、さらに主力の金石昭人と白井一幸が故障により相次いで戦列から離れることになった。
『もうこのまま、ずっと勝てないんじゃないか‥』
そんな悲愴感すら漂い始めていた翌4月5日のブルーウェーブ戦。先手を取られる苦しい展開も、ようやく息を吹き返してきた打線が粘りをみせて、1点を争う攻防。試合は同点のまま延長戦へと突入した。
それまで好投をしていた長冨浩志が12回につかまり、得点を奪われた。スコア3-4。土俵際にまで追い込まれたファイターズ。『また今日も‥』 誰もが口には出さないが、そんなことも脳裏をかすめてしまう。その裏、ひたすら勝利を願うファンの想いを背に、最後の攻撃が始まった。
1死後、14年目の伏兵・渡辺浩司がヒットで出塁。3番・小川浩一が四球で繋いだ。得点圏にランナーが進む。このままでは終われない。1死1、2塁。打席にはこの年から4番に座る主砲・田中幸雄。 『今日で止める!』
幸雄の目の色が変わった。カウント1-1からブルウェーブのクローザー、渡辺伸彦のストレートを豪快に引っぱたいた打球が高々とレフト方向に舞い上がる。一塁へ向かう途中、「いけー」「届けー」幸雄の口ぶりがそう叫んでいるように見えた。
幸雄の祈り‥ ファンの願い‥ ファイターズに初勝利を!
幸雄の打球は色んな人の想いを乗せて、レフトスタンド最前列まで届いた。シーズン初勝利をもたらす、劇的なサヨナラ3ラン!『ファイターズの逆襲がここから始まる!』そんな期待をも抱かせる、幸雄の虹を描いたような放物線は、みんなの心に希望を灯した。
※この1995年という年は結果的には4位ながらとても印象的でした。前述のように闘将・上田利治が監督に就任。戦力的には苦しかったけど、積極的に若手を起用して井出・上田・金子誠・岩本らが芽を出し始めてきていた年でした。9月には借金1にまで減らし、大多数の最下位を予想をしていた評論家連中を見返してやるかのような「反抗」は痛快でした。翌年以降に大いに期待を抱かせてくれるものでしたね。
あまのじゃくなチームでしたねぇ…。
インフルエンザ騒動の時も「普通に戦えば優勝」という時だったので、古いファンは昔を思い出して生きた心地がしなかったもんです。
今年は鶴岡の離脱が誤算ですが、チームはかなり良さそうですね。
なかでも1998年は「強烈」でしたよねぇ。たしか7月の終わりの時点で2位に10ゲーム差離していたのに、それでも優勝できなかったんですからね。そんなこともあったから、以前ここで書いたこともありますけど、優勝が決まるまで例えM1になったとしても、気が休まることはありませんでしたからね^^;
はい、インフル騒動の時は私も嫌な予感がしましたけど、まぁ見方を変えればあそこでさらにズルズルといかなかったことは、以前と比べて骨太なチームに育ってきている証なのかもしれません。でも我々を安心させてくれるような「独走」というのも、一度くらい見てみたいものですね!